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感想『仮面ライダーゼロワン』の飛電或人はなぜアークワンに闇堕ちせざるを得なかったのか

『仮面ライダーゼロワン』は2020年8月30日に遂に最終話を迎えた。
人工知能を様々な側面から描いた今作は大きな話題を集めて、いい意味でも悪い意味でも毎週盛り上がりを見せていたと感じた。
だが、今作の中でも、『42話 ソコに悪意がある限り』で飛電或人が心に悪意を宿したことで仮面ライダーアークワンに変身した展開は、恐らく最も多くの視聴者を驚かせた展開だ。
そこでこの記事では、『仮面ライダーゼロワン』の物語を俯瞰したときに或人の闇堕ちはなぜ必要であったかを、振り返っていきたい。


ちなみに、『仮面ライダーゼロワン』は「東映特撮ファンクラブ」で視聴することができる。


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或人は、其雄に本当の父親のように善意をもって育てられた影響で「ヒューマギアは人類の夢」であると信じ続けてきた。
また、『第3章』に入ってからは、シンギュラリティに達したヒューマギアたちに芽生えた“夢”を尊重するようにもなった。
しかし、或人の「ヒューマギアを信じる」という言葉からはヒューマギアの善意に対する盲信が見て取れた。


というのも、それまではヒューマギアがシンギュラリティに目覚めても原則的には善意をもって行動し、ヒューマギアの“夢”などもその製造目的に基づいた善意により生まれたものであるという前提が今作にはあったからだ。
たとえば、モデル型ヒューマギアであればその“夢”は「ランウェイを歩くことでヒューマギアの存在をアピールする」だったし、テニスコーチ型ヒューマギアであればその“夢“は「世界一のテニスコーチになること」だった。
ヒューマギアが悪意に目覚めたとしても、それは衛星アークによるハッキングの影響とされていて、そのような干渉がなければヒューマギアは善意により行動する存在である、と或人は思い込んでいる様子が示唆されていた。


しかし、ヒューマギアが人間からラーニングする存在である以上、人間の悪意に触れ続けて偏ったラーニングをしてしまったヒューマギアであれば自ずと人間に対する悪意を抱くことは当然問題として発生し得る。
実際、『28話 オレのラップが世界を変える!』に登場したラッパー型ヒューマギアのMCチェケラは、自身の意思で人間に対して悪意を抱く特異な例として登場していた。
よって、或人がヒューマギアの善意を信じる根拠は不十分である。


そもそも、今作の製作陣は人工知能を危険な存在として描くことは実際には望んでいなかったのだろう。
そのことについては、昨年に実施されたインタビューで今作の脚本家である高橋悠也氏も以下のように述べている。

高橋 そうですね。今回は、まず、AIが悪いものであるという表現はしたくないと思いました。ヒーロー番組なので、AIを敵として戦う展開はありますが、番組のテーマとしては、AIが人類を不幸にするという見えかたにならないよう、あくまで上手に付き合う方法や、手を取り合って新しい未来に向かっていくような物語を意識しました

親として子どもに伝えるべき人工知能のこと──『仮面ライダーゼロワン』から学ぶ、未来の子どもたちの仕事 | WIRED.jp

人工知能と共存する肯定的な未来を描くためにも、自身の意思で人間に対して悪意を抱く人工知能が生まれる可能性があるという問題に今作はしっかりとアプローチして解決するする必要があった


そして、その問題を滅亡迅雷.netの滅の悪意への目覚めによって今作は提示することになった。
或人が「父親型ヒューマギア (其雄) に育てられた」ことに対して滅が「父親型ヒューマギア」であるという対比などから、或人と滅が表裏一体の存在であることは今作の序盤から描かれ続けてきた。
また、仮面ライダー滅のスーツアクターに、平成仮面ライダーシリーズのほとんどの主役を演じてきた高岩成二さんが選ばれたことからも、当初からラスボス的な存在になることを想定していたと推察することができる。
そう考えると、滅は或人が乗り越えるべき最大の障壁としては非常に相応しい存在であると考える。


今作の序盤から「アークの意志のままに」行動し続けてきた滅もまた、アークの干渉により「人類滅亡」を掲げ続けてきた存在であった。
それまで従ってきたアークが天津垓という人間により人間の悪意を教え込まれていたことや、そんなアークの意志によりヒューマギアが滅びかけたことを考えると、第二のアークを生む原因となりかねない人間がヒューマギアにとっての脅威であるという認識を滅自身も持っていたことは推察できる。
よって、『41話 ナンジ、隣人と手をとれ!』でアークが破壊された後に、「人類滅亡」を心からの“夢”として掲げるようになったことはある意味当然だ。
このように、自身の意志で「人類滅亡」を望むようになった滅は、「人工知能との共存」を掲げる「善意をもってヒューマギアに接する人間」の或人とは対照的な「悪意をもって人間に接するヒューマギア」になった。


『42話 ソコに悪意がある限り』で、滅亡迅雷.netのヒューマギアである滅によって、或人の秘書を務めていたヒューマギアのイズは破壊されてしまう。
大切な存在であるイズを奪われたことに対する滅への「心」からの怒りを感じたことにより或人は仮面ライダーアークワンとなり、初めて自身の中に生まれたヒューマギアに対するどうしようもない悪意と向き合うことになった。


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或人の闇堕ちにより、それまでヒューマギアに善意をもって接してきた或人でさえ悪意に取り憑かれてしまう可能性が提示された。
つまり、「心」をもつ存在であれば誰にでも「心」の中に善意と悪意の両方を持つ。
だからこそ、「心」を持つ滅も悪意だけではなく善意も有していることを或人が信じる明確な根拠ができた。
その結果、或人の「ヒューマギアを信じる」という言葉がただの空虚なものではなく、根拠に基づいたものに変わることができた。
ヒューマギアの善意に対する「盲信」が「確信」へと変わるきっかけとなったことを考えると、或人の闇堕ちは『仮面ライダーゼロワン』における或人の成長にとっては必要不可欠であったと考えることができる


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或人は、それまではヒューマギアに対しては善意をもって接してきたため、悪意を知らない人間であったとも言えよう。
しかし、悪意を知らなければ滅の中の制御できない悪意に対してちゃんと向き合うことはできなかっただろう。
だからこそ、イズを奪われたことに対する滅への「心」からの怒りを感じることで、或人は悪意とはどういったものかを身をもって感じて、悪意のある「心」を理解する必要があった。


そもそも、『42話 ソコに悪意がある限り』で滅がイズを滅ぼしてしまったのは、自分には「心」など存在しないと頑なに信じてきたのにもかかわらず、人類滅亡を「心」から望んでいることをイズに指摘されてフラストレーションを覚えたからだ。
だが、そのようなフラストレーションを覚えたこと自体、滅の中には「心」という未知の概念に対する恐怖があったことの表れだ。
「恐怖」を感じたことは、つまりは滅の中には感情を覚える「心」があることの証だ。
更には、『43話 ソレが心』で悪意に取り憑かれてしまった或人が迅のことを誤って破壊してしまったせいで、滅も大切な存在を奪われてしまい、或人に対して「心」からの怒りを感じることになった。
結果的に、「心」を否定してきた滅が「心」から湧き上がる感情を覚えることで、自身の「心」と向き合わざるを得ない状況ができあがった。


このように、或人と滅は、大切な存在を奪われ、相手にとっての大切な存在も奪うという経験を同じくした。
そして、この経験により、大切な存在を奪われたときの「心」の痛みをお互いに教え合うことになった。
そのようにお互いの痛みを理解することができたからこそ、お互いにわかり合って悪意の連鎖を止めることができた。
そう考えると、或人と滅が本当の意味でわかり合うためにも、或人の闇堕ちは必要不可欠であったと感じる


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「心」をもつ存在であれば誰にでも「心」の中に善意と悪意の両方を持つからこそ、「心」を持つ人工知能にもその両方がある。
だからこそ、ラーニングをする人工知能とは「心」を教え合うことで、お互いに悪意を乗り越えることができる強い「心」を持つ存在へと成長できる。
そのようなことを、シンギュラリティに達した人工知能との共存の可能性として今作は提示してくれたと感じた。
よって、或人が闇堕ちして、或人と滅がお互いに悪意を乗り越える展開を今作にクライマックスに持ってきたのは、今作として「人工知能と共存する未来」の可能性を提示するためにも必要不可欠だったと感じる
意外性のある展開によって視聴者を惹きつけつつ、人工知能の課題に対する『仮面ライダーゼロワン』ならではの答えを描くことに繋がった点では、私は或人の闇堕ちは非常に意義のあるものに思えた。


勿論、或人の闇堕ちには若干の唐突感はあったし、その後の展開にも急展開がかなり多かったと感じる。
その原因として、COVID−19の影響で話数が短縮になったことが大きいと言えよう。


COVID−19の影響がなければもう少し納得感のある筋運びになったのでは、という残念な気持ちはたしかにある。
だが、『仮面ライダーゼロワン』は、製作陣や俳優が未曾有の危機の中で様々な困難を乗り越えて何とか綺麗に完結させてくれた作品であることは事実だ。
だからこそ、彼らの並々ならぬ努力によって完成した今作の最終章の魅力が、この記事を通して少しでも多くの人たちに伝わって欲しいと切実に思う。




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