Fire all engine

仮面ライダー・映画・音楽に関する感想と考察。

MENU

海外の東映特撮ファンを騒がせているとある騒動について

日本の皆さんは、海外にも『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』のファンがいることはご存知だろうか。
Twitterをやっている人であれば、数多くのニチアサ作品のチーフプロデューサーを務めてきた白倉信一郎氏が、英語で海外のファンとやりとりをしているところを見たことがあるかもしれない。
具体的な海外のファンの数を知る手段はないが、SNSや動画サイトを見ると、様々な国のファンがいることが分かる。


ただ、とある騒動がきっかけとなり、そんな海外のファンたちが先日から非常に荒れているという話を先日耳にした。
更には、白倉氏も、Twitterで以下のようなつぶやきをしていた。

白倉氏はどうやら、その騒動が原因でTwitter上で海外のファンから個人攻撃を受けてしまっているようだ。


私は、日本人でありながら、ある程度海外のファンベースについては知っているつもりだ。
というのも、私の知り合いにアジア圏の某国に住む海外のファンがいて、海外のファンの現状についてはよく具体的な話を聞いているからだ。
だからこそ、私は海外のファンが今回荒れている件についても詳細な経緯が分かるし、多くの日本人のファンにも何が起きているのかを知ってほしいと思った。
是非、この記事を通して、海外のファンの現状を知ってもらえたらと思う。


ちなみに、この記事では海外のファンの違法行為なども取り上げるが、私はそのような行為を決して肯定してはいないことは理解していただきたい。


KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT BOX VOL.1 [DVD]


スポンサーリンク


海外での意外な人気

アジア圏では、『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』の吹き替え版が頻繁に放映されている。
ライセンス等の問題があるからか、最新作が日本と同じタイミングで放映されることはない。
しかし、テレビ放送があるおかげで幼少期から『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』に触れることができる環境があるか、アジア圏ではある程度の人気を博している。
たとえば、韓国では『獣電戦隊キョウリュウジャー』の完全新撮リメイク作品『獣電戦隊キョウリュウジャーブレイブ』がオール韓国人キャストで制作されるほど人気があったようだ。

実際、私がアジア圏の某国に旅行に行った時、数年前の『仮面ライダー』作品のTシャツを着ていたり、玩具で遊んだりしている子供の姿は度々見かけた。




一方で、英語圏では『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』はテレビでそもそも放映されてすらいない。
ただ、北米が『スーパー戦隊シリーズ』を英語圏向けにローカライズしている番組『パワーレンジャー (Power Rangers)』は英語圏の子供たちの間では非常に人気だ。

パワーレンジャー(字幕版)

パワーレンジャー(字幕版)

  • デイカー・モンゴメリー
Amazon

“米国で最も成功したジャパニーズコンテンツ”と言われるほどだ。
そんな『パワーレンジャーシリーズ』は、戦闘シーンは日本の『スーパー戦隊シリーズ』のものを流用しつつ、ドラマシーンはアメリカ人のキャストを起用して撮り直している。
そのため、ストーリーなどは大きく変更されることも多く、『パワーレンジャーシリーズ』は『スーパー戦隊シリーズ』とは根本的には別作品である。
よって、『パワーレンジャーシリーズ』のファンであるからといって、『スーパー戦隊シリーズ』のファンであるわけではない。


『仮面ライダーシリーズ』に関しても、1995年に『仮面ライダーBLACK RX』のリメイクである『MASKED RIDER』や、2009年に『仮面ライダー龍騎』のリメイクである『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』が制作され、『パワーレンジャーシリーズ』と同様に北米でのローカライズが目論まれていたことが伺える。

しかしながら、『MASKED RIDER』と『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』の両作品共に生憎シリーズ化には至らず、『仮面ライダー』の英語圏向けローカライズは実質失敗に終わったと言える。


『仮面ライダーシリーズ』と『スーパー戦隊シリーズ』は両方ともに英語圏での知名度は低い。
だが、『スーパー戦隊シリーズ』の英語圏向けローカライズである『パワーレンジャーシリーズ』の知名度が高いおかげで、一定数の人がそこから『スーパー戦隊シリーズ』に興味を持ち、そのまま同じニチアサ枠の『仮面ライダーシリーズ』にも興味を持つ人が多いように見受けられる。




このようなことから、『仮面ライダーシリーズ』も『スーパー戦隊シリーズ』も、意外と海外にファンがいることが分かる。

海外に無関心だった東映

ただ、せっかく『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』に興味を持ったとしても、海外のファンがそれらの作品を合法的に視聴する方法がかなり少ない。


先述したように、アジア圏では一部作品を吹き替えで放送しているようだが、それでもその作品数はかなり限定的だ。
また、英語圏ではそもそもテレビでそれらの作品を放映すらしていない。
よって、テレビのみで満足することはやはり難しい。


海外のファンには、作品のBlu-rayやDVDを日本国内から輸入する人もいる。
ただ、海外では使用しているプレイヤーのリージョンや映像方式によっては日本のBlu-ray・DVDが再生できないこともある。
更に、日本国内向けに発売されているこれらのBlu-ray・DVDには当然字幕や吹き替え等がなく日本語音声のみであるため、日本語が理解できない大半の海外のファンにとってはハードルは高いはずだ。


我々日本の東映特撮ファンに馴染みがあるインターネット上の公式配信サービスに関しては、海外ではそもそも視聴できないことが多い。
月額960円を支払うと最新作までの東映特撮作品をほぼ全て視聴することができる東映特撮ファンクラブは、日本以外の地域からはアクセスできないようになっている。
過去作などのレギュラーコンテンツを定期的に配信している「東映特撮YouTube Official」も、日本以外の地域に対して視聴制限を設けている。
また、これらの公式配信サービスは両方とも日本語音声のみで、英語字幕等には対応していない。


このように、東映が海外のファンベースにあまり関心を持ってこなかったからか、海外のファンが『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』を合法的に観る手段はかなり限られている。




海外向けの東映公認の配信サービスは、最近になってようやく開始した。
「Shout! Factory」という北米の会社が提供する「TokuSHOUTsu」というサービスは、英語字幕付きで『仮面ライダー』『仮面ライダークウガ』『激走戦隊カーレンジャー』『五星戦隊ダイレンジャー』『忍風戦隊ハリケンジャー』などを全話配信している。
また、「Amazonプライム・ビデオ」は、英語字幕付きで『仮面ライダーアギト』と英語・中国語・韓国語字幕付きで『仮面ライダーアマゾンズ (Amazon Riders)』を全話配信している。
更には、東映が公式で運営する海外向けYouTubeチャンネル「TOEI TOKUSATSU WORLD OFFICIAL YouTube Channel」は、英語字幕付きで『仮面ライダーシリーズ』と『スーパー戦隊シリーズ』の何話かを配信している。


ただ、視聴できる作品や話数はかなり限られているうえ、最新作は配信していない。
そして、字幕の翻訳の質が低い、といった指摘も一部の英語圏のファンからは出ているようだ。

無断アップロードと“ファンサブ”

これらの海外向けの公式配信サービスはつい最近始まったばかりで、それ以前は、特に英語圏のファンは、合法的に『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』を自分たちが理解できる方法で視聴する手段はほぼなかったと言っても過言ではない。
特に最新作を視聴したい場合は、どの公式配信サービスも対応していないため絶望的だ。
よって、ほとんどの海外のファンは、違法な手段によって視聴せざるを得ない状況にあったようだ。


まずは、作品の映像に関しては、インターネット上のファイル共有サイトに無断アップロードされているため、それをダウンロードさえすれば簡単に視聴することができるようだ。
しかも、それらの映像は日本のテレビでの放送後すぐにアップロードされるようだ。
ただ、日本で制作された著作物の著作権は国境を超えて海外でも適用される*1ため、『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』の映像の無断アップロードやダウンロードもほとんどの国では違法である。


そして、そのように無断アップロードされた動画を使用して、日本語をある程度理解できるファンが、作中の台詞を翻訳して字幕をつけているようだ。
収益等は得ることなく、単なる趣味で行っているそんな彼らの行為は“ファンサブ (fansub)”と呼ばれている。
英語版“ファンサブ”の場合なんかは、最新話が放送されてから一週間以内に公開されることがほとんどのようだ。
ただ、脚本自体も著作権で保護されているため、その脚本の翻訳を行ってその字幕データの無断アップロードを行った場合は違法行為にあたるという判例がある*2
そのため、“ファンサブ”のアップロードとダウンロードもほとんどの国では違法であると言える。


“ファンサブ”には、字幕データのみを提供する「ソフトサブ」と、字幕を直接映像に焼き込みその映像ごと提供する「ハードサブ」という、二つの供給形式がある。
ソフトサブは再生するには特殊なソフトが必要になることもあり、利便性の観点から多くの場合“ファンサブ”はハードサブで提供されている。
ハードサブの場合は、作品の映像自体もアップロードすることになるため、ハードサブをアップロードした“ファンサブ”チームは脚本の著作権だけでなく映像の著作権も侵害していることになる。


ただ、海外向けの公式配信サービスが始まる前までは、英語圏のファンが自分たちが理解できる方法で『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』を楽しむためにはこのような違法行為に頼るしかなかった。
そして、海外向けの公式配信サービスが始まった今でも、その作品ラインナップが限定的なため、最新作を視聴したい場合などに未だにこのような違法行為に頼るしかない。

“ファンサブ”の危機

しかし先日、複数の“ファンサブ”チームが、東映から著作権侵害に関する警告文を受け取ったことを立て続けに発表した。
その警告文には、東映の著作権に侵害するコンテンツを全て撤去する旨が記載されていた。


東映は「TokuSHOUTsu」等の海外向けの公式配信サービスを始めて以来、海外への進出を図り始めたように見える。
恐らく、“ファンサブ”の存在が今後の東映の海外進出の弊害になることを予測し、ここで手を打ったのだと思われる。


警告文が果たして本物なのかは不明だが、それを受けて、『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』の“ファンサブ”を行っている多くのチームは混乱に陥ったようだ。
ハードサブからソフトサブに切り替えて何とか著作権侵害で訴えられる可能性を下げようとするチームもいれば、“ファンサブ”活動自体を辞めるチームもいる。
そんな“ファンサブ”が危機を迎えている今、海外のファン界隈がひどく荒れている様子だ。


その理由の一つは、“ファンサブ”がなくなると、海外のファンはそれまでのように『仮面ライダーシリーズ』や『スーパー戦隊シリーズ』が楽しめなくなってしまう可能性があるからだ。
海外向けの公式配信サービスがあるとはいえ、まだまだ作品のラインナップが充実していないのが現状だ。
また、やはり最新作を観たいファンが大多数を占めているが、今のところ最新作を海外で観る手段はない。
よって、“ファンサブ”に頼ってきたファンは、“ファンサブ”が消えてしまうと多くの作品を自分たちの理解できる方法で視聴することができなくなってしまうなる。


もう一つの理由は、海外のファンの間では東映の海外戦略に対するフラストレーションがあるからだ。
東映が多くの公式配信サービスの海外からのアクセスを禁じていることもあり、海外のファンは、自分たちが東映からずっと見捨てられてきたと感じているようだ。
一方で、“ファンサブ”チームは、そのように東映に見捨てられた自分たちを救ってくれて、海外のファンベース拡大に貢献してくれた存在だ。
海外のファンの中には日本から玩具を輸入して売り上げに貢献する人もいるため、“ファンサブ”の存在は東映や関係会社にとっては何ならプラスだ、と主張する人もいる。
だからこそ、最近になって漸く海外進出に興味を示すようになったからといって、それまで海外のファンベースを実質的に築いてくれた“ファンサブ”チームを潰しにかかった東映は、海外のファンから見るとズルいのだろう。


そのようなメンタリティから、東映の今回の行為は一部の海外のファンから叩かれている。


スポンサーリンク


今後の海外戦略の可能性

“ファンサブ”は違法であることは間違いないし、それを正当化することには賛同できない。
また、『仮面ライダーシリーズ』と『スーパー戦隊シリーズ』は両方東映の著作物であるため、東映がその権利を主張するのはごく当然のことだ。
実際に、東映の有価証券報告書でも、海外における知的財産権の侵害について触れていたりもする。

当社グループの保有する知的財産権については、海賊版や模倣品等による権利侵害が現実に発生しております。
それらについては、ケースごとに適切な対応をとるよう努めておりますが、海外あるいはインターネット等においては、法規制その他の問題から、知的財産権の保護を充分に受けられない可能性があります。

https://www.toei.co.jp/company/ir/securities-report/__icsFiles/afieldfile/2020/06/29/20200629_1.pdf


ただ、今回の騒動を理解するうえで大事なのは、海外のファンが無料で観られることを理由に違法ダウンロードをしているわけではない、という点だ。
海外のファンは、違法ダウンロード以外で多くの作品を視聴する手段がないからこそ、そうせざるを得ないのだ。


逆に、公式が既存の海外向けの公式配信サービスのラインナップを拡充しつつ良質な翻訳字幕が提供できるのであれば、たとえ有料であっても、既存の海外のファンの多くは必然的に“ファンサブ”よりもそちらに流れるだろう。
イギリスでは、ストリーミングサービスの普及によって違法に音楽をダウンロードする人が減ったという調査結果があるようだ。

「簡単に言えば、違法にダウンロードしていたユーザーの多くは、ほしい音楽を手に入れるために以前と同じようなことまでする必要がないと感じている。今やワンタッチ操作で、簡単にほしい音楽を手に入れることができるからだ。まだ現時点では、ストリーミングサービスによって違法ダウンロード問題に終止符が打たれるかどうかはわからないが、少なからず明るい兆候であることは確かである」。

音楽ストリーミングサービス席巻に伴い、違法ダウンロード数減少 | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

このように、公式配信サービスがより充実すれば、違法ダウンロードというリスクのある行為を取る必要性を感じる人が減るだろう。
何なら、月額10ドル程度の「東映特撮ファンクラブ」の海外版なんかは需要がありそうだ。


もちろん、そのように海外向けの公式配信サービスを拡充することは決して容易なことではない。
ライセンス等の問題もあるため、全ての東映特撮作品を今すぐに全世界向けに配信することは難しいかもしれない。
また、翻訳字幕をつけることも、作業量が膨大にあり、人件費がかなり必要となるだろう。
よって、コストパフォーマンス的に果たして海外のファンというマイノリティ向けにこのようなことを行う価値があるのかは不明だ。


ただ、今はマイノリティであっても、今後海外のファンが増えていく余地は十二分にある。
日本が少子化の危機に直面している中、東映としては海外市場の拡大もそろそろ視野に入れる必要性を感じているのかもしれない。
海外進出に本腰を入れるのであれは、海外向けの公式配信サービスの早急な拡充が喫緊の課題だ。





▼他の記事▼

お問い合わせ | プライバシーポリシー

Copyright © 2021 CHAMEE FACTORY All rights reserved.