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感想『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』はなぜリアルタイムで“今”鑑賞すべき作品なのか

2020年12月18日に『仮面ライダーゼロワン』の初の単独映画『劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』が公開された。
元々今作は2020年夏に公開予定だったが、COVID-19 (新型コロナウイルス) の影響で半年弱延期となった。
4月から6月にかけて発令されていた緊急事態宣言中に撮影が中止になったり、撮影再開後も現場における感染対策の徹底のため撮影スケジュールに大きく影響が出たりと、今作がCOVID-19によって受けた影響は計り知れない。
また、映画館や劇場が休業を余儀なくされたり、入場者数を大幅に制限せざるを得なかったりして、制作会社である東映や映画業界自体がかなり苦しい状況だ。


そんな不利な状況下で遂に完成して劇場で公開された今作を、私は公開初日に観に行った。
そして、実際に鑑賞してみると、今作は『仮面ライダーゼロワン』の結末として、そして、純粋に一本の映画としても非常に楽しむことができた。
それと同時に、今作は他の作品と比べても、劇場で公開されている”今”、リアルタイムで鑑賞すべき作品であることを実感した。
その理由を、私の感想を交えながらこの記事で述べていきたい。


劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME 主題歌&オリジナル サウンドトラック


この記事には、映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』や『仮面ライダーゼロワン』、その他関連作品のネタバレが含まれています。ご注意ください。


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渦中の世界

6月に緊急事態宣言が解除されてからは、数多くの出演者やスタッフが働く撮影現場等においてクラスターが発生しないように感染対策に尽力してきた。
撮影再開にあたって、東映も6月に以下のような感染対策を徹底した製作ガイドラインを発表している。

ガイドラインは、同局が定めた「安全を第一優先に濃厚接触者を出さないための撮影を行う」「『3つの密』を避けた撮影を行う」などの方針を前提に作成。撮影時間は、通常よりも短く午前6時から午後10時までとし、打ち合わせは可能な限りウェブ会議システムを使用。現場では演技時の役者を除いてあらゆる場面で2メートルのソーシャルディスタンスを保つことを徹底するとしている。

テレ朝系「仮面ライダーゼロワン」、6・1撮影再開へガイドライン作成 - サンスポ

このように、撮影現場では感染拡大防止のために最善を尽くしつつ、各制作会社は変わらずに良質な作品を提供し続けてきた。


バラエティ番組などでは、出演者がフェイスシールドを着用したり、アクリルパネルが設置されたり、出演者同士のソーシャルディスタンスが保たれたりして、「新しい生活様式」を取り入れながら撮影している様子が画面の向こうにいる視聴者の我々にも見えている。
一方で、ドラマや映画などは作品性が高いため、現場の感染対策が画面の向こうの我々には見えないように工夫されている。


このような工夫のおかげで、観客は作品の世界に没入できるような作りになっている。
ただ、それと同時に、作中の登場人物がCOVID-19の渦中にあるこの現実世界とは異なる世界にいることがどうしても伝わってしまう。
そのため、視聴者によっては少し登場人物たちとの距離を感じてしまうこともある。
これは、特にメインターゲットである子供たちから見ると「身近なヒーロー」である仮面ライダーにとっては、その人気にも影響を与えかねない副作用でもある。


その影響か、今作には、COVID-19の渦中にある現実世界を想起させるような描写が散りばめられている。
たとえば、感染対策でマスクを着用することが当たり前となった現実世界の光景を表すべく、諌たちもガスマスクを着用している。
また、感染対策としてリモートで仕事や授業をするようになった「新しい生活様式」を表すべく、登場人物たちはビデオ通話で連絡を取り合っている。
また、(今は再び満員電車にが当たり前になりつつあるものの) 緊急事態宣言が発令されて街中を出歩く人が殆どいなかった頃を表すべく、無人の電車に乗る或人の姿などが描かれている。


このように、COVID-19の渦中にある現実世界を生きる我々と似たような状況に置かれた或人たちを描くことで、観客がより或人たちに親近感を覚えることができるようになっているように感じた

体感リアルタイムサスペンス

予告編で「全人類全滅まで、あと60分」という謳い文句が話題を呼んだ通り、今作は世界滅亡までの60分間を仮面ライダーたちと共に戦う体感リアルタイムサスペンスである。
今作の副題『REAL×TIME』も、そのリアルタイムで物語が進行する今作の構成を表している。


“リアルタイムサスペンス”といえば、世界的に人気を博したアメリカのテレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』がその金字塔であり、多くの人にとっては馴染み深い。

『24 -TWENTY FOUR-』は、物語の進行と現実の時間進行が同じ速度で進み、1シーズン24話全てを観ると丸1日の出来事を目撃することができるという構成になっている*1
唐沢寿明さん主演の『24 JAPAN』という題の日本リメイク版が2020年10月からテレビ朝日で放映されていることから、最近再び話題を集めている。
そのような経緯から、今作も『24 -TWENTY FOUR-』を意識した作りになったことが推察できる。


この“体感リアルタイムサスペンス”という構成により、観客は或人たちと共に作中の出来事を体験しているかのような気分になることができる。
タイムリミットまでに何とかエスたちを止めないといけないという或人たちの緊迫感を一緒に味わうことができる。
また、世界を救うために、正にリアルタイムでゼロワンたちが戦ってくれているようにも感じられる。
よって、体感リアルタイムサスペンスであることにより、観客にとって或人たちがより近い存在であるように感じられるというメリットがある


ただ、完全に“リアルタイム”を貫かなかったことに関しては少し残念だ。
たとえば、天津垓たちが野立万亀男を問い詰めている場面でカットが変わると服を着ていた野立がいきなり全裸にされていたりと、リアルタイムに進行しておらず時間が明らかに飛んでいることが分かるシーンがいくつかある。
その詰めの甘さがなければ、恐らく“リアルタイム”の効果は増していただろう。


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それぞれの未来図

今作は、テレビ本編の最終話を経て分かり合うことができた人間とヒューマギアの関係性の集大成であると感じた。


まずは、或人と滅の関係性だ。
『仮面ライダーゼロワン』のテレビ本編の最終話で或人と滅は、本当の意味で分かり合うことができた。
私は以前執筆した以下の記事で、そのことについて詳しく語っている。

人類滅亡を目標に行動し続けてきたテロ組織である滅亡迅雷.netの滅が、今作ではエスが率いる新たなテロ組織による人類滅亡を阻止するために今度は戦う。
「この世界は捨てたもんじゃない」という滅の台詞は、人間の悪意に触れ続けてきた滅が或人と関わっていく中で世界に希望を見出してたことのあらわれにもなっていて、非常に感慨深い。
また、滅が新イズに「心」を説くシーンも、「心」を否定し続けてきた滅が或人に「心」を教えられたことによって成長した姿を写している。


そしてもう一つは、或人とイズの関係性だ。
テレビ本編の最終話の時点でイズはそれまでの記憶を失っていたものの、今作では記憶を取り戻したような描写があった。
そんなイズは、或人とは「社長と社長秘書」といった仕事上の立場を超えた信頼関係をテレビ本編で築いてきた。
今作において、イズが或人を助けるために或人の命令に逆らって駆けつけるシーンは、正にその象徴であると感じた。
或人が変身するゼロワンとイズが変身するゼロツーが並び立つ姿も、そんな二人の関係性の集大成としては非常にしっくりくる。


また、これまでのテレビ本編では見ることがあまりなかった珍しい組み合わせの人間とヒューマギア関係性も描かれた。
たとえば、諌と迅が空中戦で共闘するシーンや、唯阿と亡が一緒に調査するシーンなどがあった。


このように、今作では人間とヒューマギアが「心」を通わせながら手を取り合って生きていく未来が垣間見えた。
そして、テレビ本編からの積み重ねがあったからこそ魅力的に描くことができたのだと感じた。

楽園の創造

今作の中盤までの敵は、仮面ライダーエデンに変身するエスという存在だ。
エスは、楽園ガーディアを創造するために世界中で同時多発テロを起こす極悪非道な存在として描かれた。
エスを演じる伊藤英明さんの、映画『悪の教典』で演じた極悪教師を想起させるような怪演からも、正に“純悪”とも思えるような魅力的な強敵として或人たちの前に立ちはだかった。

悪の教典

悪の教典

  • 伊藤英明
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しかし、そんなエスに対する観客の見方が今作の終盤で大きく変わるのが、今作の面白いポイントだ。
まず、エスが楽園ガーディアを創造しようとしたのは、命を落とした婚約者である朱音に生きていく世界を与えるためであったことが明らかになる。
そして、シンクネットで集まったエスの信者は、“楽園ガーディアに選ばれし人たち”ではなく、実は“滅びゆく世界に残るよう選ばれた人たち”であったことも判明する。
つまり、エスが実行したテロはエスの大切な人のためでありつつ、無差別に命を奪っているわけではなかったことになり、これまでのエスの行為の意味合いが変わってくる。
このように、今作の終盤に突入すると、極悪非道に見えていたエスに対して観客が同情できるように、エスの「心」の中が明かされていく構成となっている。


そして、そのようなエスの心情が明かされた後、或人たちまでもがエスに対して好意的に接するようになる。
勿論、婚約者のために勝手に関係のない人たちを巻き込んだり傷つけたりしたことはダメだと思っているだろう。
ただ、デイブレイクの際にエスが朱音のことをナノマシンで治療しようとした結果、朱音がデータの世界で生きるようになったことについて、或人は「(エスは朱音の) 心を救った」と肯定的に捉えている。
言い換えると、或人は“たとえ実体がなくてもデータの中で朱音の「心」は生きている”と考えている。
このスタンスは、“ヒューマギアにも「心」はある”という或人のこれまでのスタンスの延長線上にあることを考えると非常に理にかなっているように思える。


また、テロ攻撃では人々を苦しめるために使われたナノマシンが、朱音のことを結果的に救うことにも繋がったため、ナノマシンというテクノロジーの功罪も明らかになった。
テクノロジーの功罪という点では、テレビ本編でも「ヒューマギア」というテクノロジーを通して、その可能性と危険性を描き続けてきた。
今作でもあるとは、ナノマシンも同様に、そのテクノロジーを人間がどう扱うか次第では人間を幸せにできるテクノロジーであることを知ることができた。


このように、或人がエスと接していく中で、テレビ本編で描いたテーマが「ヒューマギア」を超えて他のテクノロジーに対しても普遍的に適用されるものであることを描いた
そのため、特に目新しい価値観が今作では紹介されたわけではない。
だが、テレビ本編における最終話までの或人のヒューマギアとの関わり合いに更なる意義を付与してくれたと捉えることができる。


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結論

『仮面ライダーシリーズ』はもちろん、後から動画配信サイトやDVD・Blu-rayで観ることもできる作品ではあるが、やはりリアルタイム性が高い作品である。
というのも、その作品が製作された当時の情勢を大きく映し出している作品だ。
その中でも特に今作は、リアルタイムで多くの方々に“今”劇場で鑑賞してほしいと強く感じた作品だ。
その理由が二つある。


一つ目は、作中の登場人物たちとの心理的な距離を近づけてくれる作品だからだ
ステイホームやソーシャルディスタンスが推奨されているなか、我々は他者との物理的な距離を取らざるを得ない世界で生きている。
だからこそ、“今”を生きる多くの人々は少し寂しさを覚えているに違いない。
或人たちがCOVID-19と似たような状況下にいる設定や、体感リアルタイムスサスペンスという今作の構成のおかげで、我々観客は、COVID-19の渦中に放映された『仮面ライダーゼロワン』の登場人物がより近い存在であるかのように感じることができる。


そして二つ目は、『仮面ライダーゼロワン』をリアルタイムで一年間観てきた人が観るべき最終話の先の後日談として作られているからだ
平成2期以降の「夏映画」は、テレビ本編の最終話直前という微妙な時期に公開されることが通例となっていた。
ただ、今作はCOVID-19の影響で公開が延期になったことで、最終話の放映後に公開されることになってしまった。
今作が公開された段階では『仮面ライダーゼロワン』の放映が完全に終了し、今では『仮面ライダーセイバー』が子供たちの関心の的となっている。
そう考えると、『仮面ライダーゼロワン』の単独映画をこのタイミングで公開することは、従来と比べると不利なのかもしれない。
ただ、最終話の後の物語を描くことができる点を逆手に取り、今作は公開延期が決まってから脚本を練り直したようだ。

『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』は、本来テレビシリーズ放映中の2020年夏に公開される予定で製作が進められていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で製作スケジュールが例年よりも遅れたため、テレビシリーズが最終回を迎えた後に改めて脚本を練り直し、「最終回の"その後"」の時間軸でストーリーが展開することになったという。

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そしてその結果、人間とヒューマギアの関係性や、或人の価値観といった、テレビ本編で最終話まで一年間かけて描いてきたことを存分に活かした作品となった。
よって、リアルタイムでテレビ本編を最終話まで追ってきた人こそ今作は“今”鑑賞すると最大限に楽しむことができる。


『仮面ライダーゼロワン』がどれほど紆余曲折を経てこのCOVID-19の渦中を乗り越えてきたかを考えると、シリーズの集大成とも言える今作を劇場で鑑賞して色々な感情が込み上げた。
やはり、リアルタイムで鑑賞することでこそ、今作の真価が発揮される。





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