『ビルドの実験経過』と題して、毎週仮面ライダービルドの感想や考察を書いているシリーズ。
今回は2018年8月19日放送、仮面ライダービルド 48話『ラブ&ピースの世界へ』について話したいと思います。
お付き合いお願いします。
月を吸収
エボルトは全てのロストボトルをパンドラパネルにはめて、怪人態に変身。
その力で、月のエネルギーを吸収して更に強力になる。
月が吸収されてしまったら、異常変動が起こってしまって、地球全体が混沌を極めるだろう。
このような事態になってしまった今、戦兎たちにはやはり新世界創造以外に地球を救う手段はないのだろうか。
さすがの天才物理学者桐生戦兎にも、人工的に月を創る力などはないだろうから。
しかし、月すらも自らの力に変えるエボルトは、ブラッドスターク時代とは比べ物にならないほど恐ろしいラスボスになってしまった。
ビルドジーニアスでも今のエボルトに敵うとは到底思えない。
命を懸ける幻徳
幻徳はエボルトと戦った際に負傷してしまったが、それでも「仮面ライダーに命を懸ける」ために再び立ち上がって戦う。
幻徳「俺たちは誓ったんだよ。仮面ライダーに命を懸ける、って。」
戦兎「その賭けに負けるなよ。生きるために戦うんだ。」
幻徳「あぁ。」
戦兎「お前の野望は… 俺たちが打ち砕く!それが一海の… 全ての人の想いだ!」
エボルト相手に苦戦するものの、幻徳は、一海にもう一度政治家になるように言われた時の言葉を思い出し、国の未来のために戦うことを決心。
そして、エボルトの動きを止めるためにエボルトリガーを壊そうとする。
幻徳「この国の未来は… 俺が守る!」
更に、パンドラタワーの下にいた一般市民たちが、仮面ライダーに送っている声援を聞き、それが幻徳の戦う力となる。
幻徳「聞こえるぞ。みんなの声が。祈りが!」
(中略)
幻徳「親父。やっと分かったよ。国を創るのは力を持つ者じゃない。力を託せる者だって。これで最後だ。大義のための… 犠牲となれ!」
一海や一般市民、父親などの多くの人の気持ちに応えた最期の戦いは、身勝手で野心に満ちていた頃の幻徳とは対照的で、非常に魅力的な最期だと感じた。
また、一般市民の後押しを受けて戦い抜く様は、政治家の氷室幻徳としての相応しい最期だったと感じる。
一般市民の声が政治家の力となり、それに応えるために一生懸命になれるのは、当たり前のことではあるが大変重要なことだ。
それを、今回の幻徳の戦いを通して実感できた。
一方で、47話で内海が亡くなったことで、内海を撃ったことに対する罪悪感が更にわいてしまったのだと認識していたが、幻徳が今回それについて一切触れなかったことがかなり引っかかった。
せっかく内海がサイボーグであったことも唐突に明かされたのだから、もう少し内海が亡くなったことに言及してくれたら嬉しかった。
一般市民の声援
幻徳や戦兎たちは、一般市民の声援を受けて、エボルトを倒すための力を得る。
戦兎「ライダーシステムは、怒りや憎しみじゃ強くなれない。みんなの想い一つひとつが… 俺たちの糧となり… 力となる!」
「感情」の力で強くなるライダーシステムを使用して「ラブ&ピースのために戦う」、という設定にマッチしていてビルドらしい演出だと思う。
戦兎たちはこれまで人々の「ラブ&ピース」のために戦ってきた。
「人々」は一般市民を内包するが、主語が非常に大きいからか、これまで一般市民との関わりがあまり描けていなかった。
よって、「一般市民がライダーの力になる」という演出は説得力に欠けていた印象だ。
46話前の出来事である『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』では、一般市民の「殲滅」対象となって追いかけまわされても「ラブ&ピース」のために戦う「見返りを求めない」ヒーロー像を描いた。
そして今回、逆に仮面ライダーたちが応援される側になった。
映画で描かれるのは全ての国民から殲滅宣言を受け、追われる存在の仮面ライダーです。例え世の中の危機を解決したとしても、それが万人から認められ拍手喝采を受けることはありません。そもそも、戦争を起こした罪を背負ってきたビルド。拍手喝采を送られたとしても受け入れることはないと思いますが、見返りを求めない正義というものを映画では最後まで描き抜きました。
一方、第48話ではすべての国民が仮面ライダーに助けを求め、初めて励ましの言葉を口にしました。エボルトの地球壊滅の宣言を受けて、ついに世の中の人々が仮面ライダーが地球を救おうとしていたことに気付き始めたのです。人々の声は力になり、ライダーシステムの可能性を高めます。人々の想いを受け取るシステムだからこそ強くなるこの戦兎の発明品で、次回ついに世界の救済という最後の実験に挑みます。
— 東映『仮面ライダービルド』公式HP
しかし、仮面ライダーと一般市民の関係性がこれまでほとんど描かれていなかったため、一般市民の反応を思い浮かべると、劇場版と今回の48話しか思い浮かばない。
結果的に「一般市民の都合のいい手のひら返し」に見えてしまい、市民の利己的な考えがライダーの力になる、という構造が視聴者の脳内で出来上がってしまう。
これまで「利己的な一般市民」や、それに応える仮面ライダーを描いてこなかったこともあり、今回の展開はかなり唐突に思えてしまった。
「一般市民」は「全体」なので漠然としているが、その中の「個」を少しでも描けていれば、もう少ししっくりきたのかもしれない。
新世界の扉
幻徳によってエボルトリガーが破壊されてしまい、その影響でエボルトの力が弱まってしまう。
そこで龍我は、白いパンドラパネルを、エボルトの体内から出た黒いパンドラパネルと合体させる。
白いパンドラパネルとジーニアスフルボトルの力がリンクし、スカイウォールのない世界 (B世界) が引き寄せられる。
やはり、次作『仮面ライダージオウ』と上手く繋げるために、新世界エンドにするのだろう。
それに関しては制作側の事情も絡んでいると思うし仕方がないとは思う。
しかし、ブラックホールやパラレルワールドという「物理法則を超える現象」を「勝利の法則」とするのはビルドらしいが、それを発見したのが戦兎ではないことがどうしても引っかかる。
最後くらいは天才物理学者桐生戦兎の手腕を発揮してほしかった気もする。
ジーニアスボトルが使用不能になったようだが、もうジーニアスフォームは出ないのだろうか…?
龍我の自己犠牲
戦兎は、龍我に何があっても生き残るように指示する。
戦兎「エボルトの遺伝子を持つ者が地球存亡の鍵を握る。だからお前は、何があっても最後まで生き残るんだ。たとえ仲間を失っても。」
そして戦兎はエボルトと共に特攻しようとするが、その役割を龍我が代わりに引き受ける。
龍我「俺にもエボルトの遺伝子が宿ってる。一緒に消えるのは… 俺のほうが都合がいい!」
戦兎「お前、まさか… やめろ、万丈!」
龍我「戦兎。ありがとな!」
皮肉なことに仮面ライダーの中で戦兎が唯一生き残ることになりそうだが、それを戦兎がどのように受け止めるのかが最終回の見どころの一つになりそう。
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